2026.07.08
「ステマ」という言葉を知らない人は、今やほとんどいないでしょう。
ですが、「知らないうちにステマをしてしまっていた」というケースは、決して珍しくありません。
SNSや口コミサイト、アフィリエイトを活用したプロモーションが当たり前となった今、企業が「ステルスマーケティング(ステマ)」と指摘され、炎上や行政指導を受けるケースが増えています。
自社では正しく運用しているつもりでも、PR表記の不備やインフルエンサーの投稿内容など、ちょっとした見落としによってステマと判断され、信頼の失墜や売上への悪影響を招くこともあります。
この記事では、ステマの定義や規制の中身、実際に措置命令を受けた企業事例、自社が知らずにステマをしていないかの判別方法まで、企業のSNS担当者・マーケティング担当者に向けて体系的に解説します。
ステマ(ステルスマーケティング)とは?

ステルスマーケティングとは一般的に「ステマ」と呼ばれ、消費者に広告であることを隠しつつ、商品・サービスを宣伝する行為です。
「ステルス」という言葉には「ひそかに行う」などの意味があり、ステルスマーケティングとは「隠れてマーケティング(宣伝活動)する」ことを指します。
具体例を挙げると、企業が自社商品を紹介するよう依頼したインフルエンサーが、報酬や提供品を受け取っていながら、それを明示せず「自発的なレビュー」として投稿した場合、ステマに該当する可能性があります。
ステマが社会問題化した背景には、SNSの普及による消費者心理の変化があります。
近年、X(旧Twitter)やInstagramといったSNSの普及により、個人の情報発信が強い影響力を持つようになりました。
さらに、インフルエンサーマーケティングが台頭したことで、個人と企業の境界線が曖昧になっている状況です。
そのなかで、消費者は企業が発信する広告よりも個人が発信する「リアルな声」に信頼を置くようになり、いわゆる”宣伝臭”がする広告を避けるようになりました。
より自然にアプローチできる広告を打つ必要性が企業に生じた結果、ステマが増えたと考えられます。
つまりステマは、「広告だと思われたくない」という企業側の思惑と、「リアルな声を信じたい」という消費者側の心理が交差した結果生まれた手法です。
だからこそ厄介で、だからこそ規制が必要だったともいえます。
景品表示法によるステマ規制の内容

ステマは2023年10月1日以降、景品表示法における違反行為となりました。
これは、ステマが横行した場合、消費者側だけではなく、商品・サービスを提供する企業側にも影響する可能性があるためです。
消費者庁が公表している「ステルスマーケティングに関するQ&A」では、明示方法として「広告」「PR」「提供:〇〇株式会社」などの具体的な文言を提示しており、これらの表記が投稿の見出しや文頭に含まれている必要があるとされています。
違反が発覚した場合、措置命令や社名公表などのペナルティがあります。
また、措置命令に従わない場合は、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金を科せられる可能性があるため、事業者は十分に注意しなければなりません。
なお、現時点でステマ単体には課徴金制度がありませんが、今後の法改正で課徴金対象になる可能性は高いとされています。
一方で、優良誤認表示など他の景表法違反と併せて摘発される場合は、課徴金の対象となります。
例:
「このサプリを飲めば痩せる!」
→実際には効果なし(優良誤認)
→しかも広告であることを隠している(ステマ)
→両方の違反で課徴金対象となる
課徴金の額は、違反した商品・サービスの売上の3%です。
3年間の売上が5,000万円以上の場合のみ対象となり(課徴金150万円以上)、2024年10月改正により、過去10年以内に措置命令を受けていた場合は繰り返し違反として課徴金が1.5倍になります。
規制対象は、SNSなどのインターネット媒体、雑誌、新聞、テレビなど幅広く含まれます。
SNSだけの問題ではなく、すべての広告媒体に共通する規制であることを理解しておく必要があります。
ステマが問題視される3つの理由

なぜステマはこれほど問題視されるのでしょうか。
3つの観点から整理します。
消費者の自主的な選択を妨げる
なぜ今、このステマが企業の命運を握るほど重要なのでしょうか?
その最大の理由は、消費者の自主的かつ合理的な商品・サービス選択を阻害するという点にあります。
消費者は通常、広告にはある程度の誇張が含まれていると理解して情報を受け取りますが、ステマではそれが「第三者の信頼できる情報」と誤認されるため、正しい判断ができなくなってしまいます。
消費者の信頼を裏切る行為である
ステマの問題点は、消費者にとって「広告であると気づかずに情報を受け取る」ことにより、購買判断をミスリードされる恐れがあることです。
企業にとっては、ステマが発覚した際に「消費者をだました」という印象を与えてしまい、炎上や不買運動につながるリスクもあります。
一度失った信頼は回復に時間がかかる
一度ステマが発覚すれば、企業は消費者の信用を失い、売上の低迷、法的罰則、そして「ステマ企業」という長期的な風評被害に悩まされることになります。
このような信頼の失墜は、その後の企業活動に深刻な影響を及ぼし、事業の存続すら危うくする可能性があります。
ステマの2つの手法

ステマにはさまざまな手法がありますが、大きく分けると「なりすまし型」 と「インフルエンサー発信型」の2種類です。
前者は関係者が直接ステマに関与する手法、後者は第三者にステマを依頼する手法という違いがあります。
なりすまし型
なりすまし型は、企業や広告代理店などの関係者が一般消費者になりすまし、商品・サービスを評価する手法です。
企業や個人が、関係のない第三者を装って自社製品を宣伝する手法で、従来の「サクラ」や「やらせ」と類似しています。
具体的には、企業の社員が個人を装ってECサイトに高評価レビューを投稿する、広告代理店が「一般ユーザー」のふりをしてSNSに好意的な投稿をする、といった行為がこれに該当します。
インフルエンサー発信型
影響力のある芸能人やインフルエンサーに報酬を支払いながら、広告であることを隠して商品を宣伝する手法です。
特にSNSの利用が活性化するにつれて流行しています。
現在、企業がステマと指摘される事例の大半はこちらの形式です。
インフルエンサーマーケティングが一般化したことで、企業とインフルエンサーの関係性をどう開示するかが重要な論点になっています。
【関連記事】SNSマーケティングとは?企業の担当者が知るべき仕組みや手法、事例、成功の秘訣を徹底解説
ステマの措置命令を受けた企業事例

実際にステマとして措置命令を受けた事例を見ることで、自社が陥りやすいパターンを具体的に把握できます。
いずれも公開情報をもとにした内容です。
実績データ(2024年8月〜2025年7月)として、課徴金の総額は約3億3,348万円に達しています。
2024〜2025年には大手企業でさえ措置命令を受けています。
ほとんどが「悪意」ではなく、「知らない」「曖昧なまま」対応していたことが原因です。
事例1.映画PRにおける一斉投稿
映画の公開後に7名の漫画家・イラストレーターが映画を高く評価する漫画・イラストを一斉にSNSへ投稿したケースです。
投稿には「広告」や「PR」などの表記がなく、ほぼ全員が同じ時間帯に投稿され、使用するハッシュタグも同じだったため、「ステマではないか」との疑念が強くなり、炎上しました。
翌日には投稿者が謝罪コメントを発表し、「投稿した漫画は映画制作会社に依頼された広告だった」と明かしました。
この後、さらに事態は悪化しました。
7名の謝罪文がどれも似通った内容であったことや、近い時間帯で投稿されたことなどから「この謝罪文も制作会社から指示されて投稿したのでは」との疑念が高まり、さらに批判が集まり、再び炎上してしまいました。
PR表記の欠落だけでなく、「不自然な一斉投稿」自体が疑念を生む要因になります。
さらに、謝罪対応すら「やらされている感」が出ると二次炎上を招くため、危機対応にも独自性・誠実さが求められます。
事例2.業界大手プライベートジム
2024年8月に摘発されたプライベートジム業界最大手の企業の事例です。
コンビニジムに関する宣伝において、2つの景品表示法違反で措置命令を受けました。
1つは「24時間全店舗追加料金なしで利用可能」といった表示が実態と異なる優良誤認表示、もう1つはSNS上のインフルエンサーによる投稿(UGC)を自社サイトに転載する際に広告であることを明示せず、一般ユーザーの口コミであるかのように掲載していたことによるステルスマーケティング告示違反です。
インフルエンサーの投稿を自社メディアで再利用する際も、広告であることを明示しなければステマ規制に抵触します。
コンテンツの二次利用時にも広告表示の義務があることを示す重要な事例です。
事例3.大手製薬会社のサプリメント
2024年11月に摘発された大手製薬会社のサプリの事例です。
自社通販サイトにおいて、商品の無償提供と固定報酬を条件としてSNSへの投稿を依頼したインフルエンサーによる投稿を紹介する形で掲載しました。
SNSの投稿内では#PRなどの記載がされていたものの、LP内ではこれらの投稿が広告であることを明示せず、消費者に誤認を与える形で使用していたため、ステマとして措置命令を受けました。
インフルエンサー投稿を引用掲載する場合、SNS側で広告と表示していたとしても、引用先(LP等)でも広告であることを明示する必要があります。
「SNSでPR表記済みだから安全」という思い込みは危険です。
事例4.クリニックのレビュー
歯科クリニックのGoogleマップへの★5などのレビュー投稿の見返りとして施術料の値引き、もしくは金券をプレゼントしてレビュー操作を行った事例があります。
2025年3月に摘発された別の事例も内容はほぼ同じで、企業こそ違えど同じような誤解をしてしまっている印象です。
「レビューを書いてくれたらお礼をする」という一見ささやかな対応も、対価を提供してレビュー内容に影響を与えている場合はステマ規制の対象となります。
口コミサイト・レビューサイトの運用にも注意が必要です。
見落としがちなステマリスク

上記の事例からもわかる通り、近年特に注意すべきなのが「UGC(ユーザー生成コンテンツ)の二次利用」におけるステマリスクです。
各社共通して、SNSでの投稿を二次利用した先での広告表示の不足という点が規制対象として摘発されています。
いずれも「お客様の声」のような形でLPにSNSの投稿を引用していましたが、昨今のUGC活用の観点では一般的な手法としてよく見られるものの、多くのマーケ担当者はこれがステマになり得るということにそもそも気付いていないのではないでしょうか。
対策として、LP側で引用する際に「インフルエンサーによるPR投稿が含まれます」という旨や、「無料モニターによる投稿です」などの記載をして、広告であることを明示する対応が挙げられます。
重要なのは、インフルエンサーによって投稿された内容はもちろん、二次利用した際に「その掲載の仕方で一般消費者に『広告であること』がわかりやすいか」という視点でよく確認をすることです。
また、購入者の自然な口コミとステマの境界線についても整理しておきましょう。
たとえ購入者の実体験に基づいたレビューであっても、事業者が依頼して書かせた時点で「事業者の表示」と見なされます。
そのため、「PR」などを記載しなければステマになり得ます。
一方で、「レビューを書けば5%OFFクーポンをプレゼント」などのキャンペーンでは、購入者が自主的にレビューを投稿し、事業者との直接のやりとりがないため、ステマ規制には該当しません。
ポイントは、事業者・購入者間に「直接のやりとり」があるかどうかです。
アフィリエイトについても同様の注意が必要です。
広告することで報酬が発生する場合、「広告」「PR」などの表記が無ければ違法となります。
アフィリエイターは事業者に該当するため、事業者の表示が必要です。
商品を使用した感想などをブログに書き、アフィリエイト収入を得ている場合は「広告」「PR」などを記載する必要があります。
自社がステマをしていないか判別する方法

以下のチェックリストで、自社の施策がステマに該当するリスクがないかを確認しましょう。
1つでも「いいえ」がある場合、ステマ規制違反のリスクがあります。
インフルエンサー施策のチェック
□ 依頼・報酬・商品提供があった投稿に「PR」「広告」等を明示しているか
□ 商品の無償提供(ギフティング)だけの場合もPR表記対象と認識しているか
□ インフルエンサーの投稿だけでなく、自社サイト・LPへの引用掲載時にも広告表示を明示しているか
□ PR表記がハッシュタグの末尾に紛れ込んでいないか
□ 各SNSの専用ラベル機能を併用しているか(Instagramのタイアップ投稿ラベル等)
口コミ・レビュー施策のチェック
□ レビュー投稿の見返りに金券・割引・特典を提供していないか
□ 提供している場合、その関係性を明示しているか
□ 「レビューを書けば〇〇プレゼント」型キャンペーンで、投稿内容(好意的な内容限定等)を強制していないか
□ 自社社員・関係者が「一般消費者」を装って投稿していないか
UGC活用・二次利用のチェック
□ SNSの投稿をLP・広告に転載する際、広告であることを改めて明示しているか
□ 「お客様の声」として掲載するコンテンツが、実際は依頼・対価提供を伴う投稿ではないか確認したか
□ アフィリエイターのブログ・SNS投稿に適切な広告表記があるか確認したか
社内体制のチェック
□ ステマ規制について社内(特にマーケティング担当者)が正しく理解しているか
□ インフルエンサー・アフィリエイターとの契約書にPR表記義務を明記しているか
□ 投稿前のチェック体制(誰が・どう確認するか)が整っているか
□ 過去の投稿・LP掲載コンテンツを定期的に見直しているか
ステマを防ぐための実務対応

ステマを防ぐために、下記の対応を意識しましょう。
透明性を前提とした関係構築
インフルエンサーを活用する場合、誠実なパートナーシップを構築することが重要です。
企業はインフルエンサーとの関係をオープンにし、報酬やスポンサーシップの内容をきちんと開示することで、ステマを避けることができます。
また、企業側でインフルエンサーに対して透明性に関するガイドラインを提供し、それを厳守するよう求めることも有効です。
表記すべき具体的な文言を社内で統
「誰が見ても広告だとわかる」ように表記することが基本です。
具体的には「#PR #広告 #AD #プロモーション #タイアップ #Sponsored」「○○社様からご提供いただきました」「○○社とのタイアップ投稿です」などの表現が推奨されます。
媒体別の表示位置についても明確なルールを持つことが大切です。
Instagramはキャプションの冒頭、X(Twitter)はポストの冒頭、YouTubeは動画の冒頭+説明欄の冒頭、TikTokは動画の冒頭+キャプション、ブログ・noteは記事タイトル+本文冒頭に表記することが推奨されています。
「具体的にどう表記すればいいのか」をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】SNS PR表記の正しい書き方とは?ステマ規制・SNS別ルール・チェックリストを徹底解説
社内教育やモニタリング体制の構築
正しい知識を持つことは安心して発信できるだけでなく、「信頼される発信者」として選ばれるチャンスになります。
社内のマーケティング担当者・広報担当者だけでなく、インフルエンサーに直接依頼する現場担当者全員が、ステマ規制の基本を理解していることが、最も確実な防止策です。
また、企業がステルスマーケティングのリスクを回避し、透明性の高いマーケティングを行うための社内ガイドライン作成支援や、インフルエンサーの投稿内容をモニタリングするSNS監視サービスを利用することも、法的リスクを最小限に抑える方法の一つです。
まとめ
ステマは「広告であることを隠した宣伝」を指し、知らないうちにやってしまっている可能性がある、企業にとって身近なリスクです。
2023年10月から景品表示法上の不当表示として明確に規制対象となっており、違反すれば措置命令・社名公表・場合によっては課徴金という重いペナルティが科される可能性があり、何より「ステマ企業」という風評ダメージは長期にわたって企業を苦しめます。
「知らなかった」では済まされない時代です。
「自社の施策がステマに当たるかどうか判断できない」
「インフルエンサー施策を安全に実施したい」
「SNS運用全体を法令遵守の形でプロに任せたい」
そんな企業様のご相談を、BEASTARでは随時受け付けています。
BEASTARは大阪を拠点とするSNS運用代行・SNSマーケティング会社です。
InstagramやX、TikTokを中心に各SNSの運用代行・コンサルティングを行っており、最新機能をいち早く取り入れた戦略設計から投稿制作・分析・改善まで、ワンストップでサポートします。
まずはお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。