2026.07.01
「インフルエンサーに依頼した投稿に、PR表記をつけ忘れていた」
「ハッシュタグの一番最後に小さく#PRと入れていたけど、これで大丈夫?」
SNSマーケティングを行う企業の担当者にとって、PR表記の正しい運用は避けて通れない課題です。
2023年10月、ステルスマーケティング(ステマ)が景品表示法違反として明確に規制対象となりました。
それ以降、PR表記の重要性は年々高まっており、2025年からはステルスマーケティング規制が本格適用されています。
広報・広告担当者は、単なる表現管理ではなく、会社のブランドと資産を守る経営リスク管理の最前線に立たされることになりました。
「PR」と書けばいいだけでしょ、と思っていると危険です。
ただPR表記をつけていれば、ステマ規制に違反しないとは限りません。
表記の位置・大きさ・文言・SNSごとの設定方法まで、正確に理解しておく必要があります。
この記事では、PR表記の基本ルールから、Instagram・X・TikTok・YouTubeなどSNS別の正しい設定方法、そのまま使える文例・チェックリストまで、企業のSNS担当者に向けて徹底解説します。
そもそも「PR表記」とは?ステマ規制との関係

PR表記とは、SNSやWebサイト等で、投稿や記事が広告・宣伝であることを明示するために付ける「PR」「広告」「提供」などの表示です。
消費者が一目で「広告である」と分かるように、コンテンツの冒頭や目立つ位置に表示する必要があります。
このPR表記が法的に重要視される背景には「ステマ規制」があります。
広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すことがいわゆる「ステルスマーケティング」です。
景品表示法は、うそや大げさな表示など消費者をだますような表示を規制し、消費者がより良い商品・サービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守ります。
消費者は、企業による広告・宣伝であれば、ある程度の誇張・誇大が含まれているものと考えており、そのことを含めて商品・サービスを選んでいます。
つまり、ステマが問題視される理由は「広告だとわかっていれば、消費者は適切な距離感で受け止められる」という前提が崩れてしまうからです。
広告であることを隠すと、消費者は「これは純粋な個人の感想だ」と誤解し、適正な商品選択ができなくなってしまいます。
ステマ規制の対象は「一般消費者が事業者の表示であることの判別が困難である表示」です。
事業者の表示であるにもかかわらず、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示であれば不当表示、すなわちステマとみなされて規制の対象となります。
つまり、明確に「PR」「広告」などの表記を行う必要があるということです。
法律上の重要な整理として、ステルスマーケティング告示の規制対象となるのは、「自己の供給する商品または役務の取引に関する表示について、その内容の決定に関与した事業者(いわゆる広告主)」です。
したがって、広告主から広告・宣伝の依頼を受けて表示を行うインフルエンサーやアフィリエイターは規制の対象外となります。
つまり、PR表記漏れの責任を負うのは基本的に広告主(企業側)だということ。
「インフルエンサーが勝手に表記を忘れた」という言い訳は通用しません。
そのまま使えるPR表記文例集
以下はそのままコピーして使える文例です。
文例を使う際は、必ず投稿の冒頭や目立つ位置に配置し、各SNSの公式ラベル機能(タイアップ投稿ラベル・商用コンテンツ公開設定など)と併用することが、ステマ規制対応として最も安全な方法です。
| 【PR】〇〇株式会社様より商品をご提供いただきました。 |
| PR|〇〇とのタイアップ投稿です。今回は〇〇様より商品をご提供いただき、使用した感想をお届けします。 |
| 【PR】〇〇様より商品を無償でご提供いただいての投稿です。 |
| 【広告】〇〇キャンペーンに参加しています。 |
| 本投稿は〇〇株式会社の提供によるプロモーションです。 |
| 本動画は〇〇株式会社からのご依頼により制作した、プロモーションを含むコンテンツです。 |
PR表記が必要なケース・不要なケースの判断基準

PR表記が必要かどうかを判断する基準を整理しましょう。
PR表記が必要なケース
以下のような条件に当てはまる行為は違法(ステマ)となります。
・広告主の依頼や意図で発信されている
・報酬や商品提供などの対価が発生している
・その事実(広告であること)が消費者に明示されていない
ステマに該当するかどうかは、「報酬が金銭かどうか」に限られません。
たとえば、企業から商品を無償提供され、その対価として投稿を行った場合でも、広告と見なされます。
つまり、現金報酬でなくても「商品提供(ギフティング)」だけでPR表記が必要になる場合があります。
PR表記が不要なケース
一方で、すべての投稿にPR表記が必要というわけではありません。
例えば、インスタグラマーが企業の商品について自身のInstagramで紹介した後になって、企業から連絡があり割引券をもらったり次回から広告として使いたいと連絡をもらったケースであれば、Instagramで紹介した時点では企業からの依頼はないのでPR表示は必要となりません。
つまり「投稿した時点で企業からの依頼・対価提供がなかったか」が重要な判断軸です。
事後的な謝礼であれば、投稿自体は自発的なオーガニックUGC(ユーザー生成コンテンツ)として扱われます。
判断に迷うケース
企業が実施する投稿キャンペーンについても注意が必要です。
消費者庁のQ&Aでは次のようなケースが示されています。
お菓子の発売20周年を記念して、SNSにおいて特定のハッシュタグを付けて感想を投稿した方の中から抽選で景品をプレゼントするキャンペーンについて、この投稿キャンペーンを見てなされた投稿が告示に違反することはあるか。
また、『#毎日食べたい美味しさ!』など特定のハッシュタグを付けて投稿することを応募条件とする場合はどうか。
このように、キャンペーンの応募条件として「特定の好意的な内容」を投稿させる場合は、事業者が表示内容を実質的に決定しているとみなされ、ステマ規制の対象となるリスクが高まります。
応募条件はできるだけ「投稿すること」のみとし、内容を指定しないことがポイントです。
ついやってしまうNGなPR表記の具体例

PR表記をつけているつもりでも、書き方・見せ方によっては違反とみなされる可能性があります。
折りたたまれて隠れる位置に表示する
PRを表記する位置は見落としがちなポイントです。
消費者庁は「一般消費者が認識しやすい場所」に表示することを求めており、投稿の冒頭に記載するのが最も安全です。
「もっと見る」を押さないと見えない場所、投稿の最後に表示し、折りたたまれて隠れてしまう表示方法は不適切だと言えるでしょう。
ハッシュタグの末尾に紛れ込ませる
下記のように、大量のハッシュタグの末尾に紛れ込ませる行為も、広告表示として不適切と判断される可能性が高いです。
#ファッション #コーデ #今日の服 #ootd #夏コーデ #夏服 #ワンピース #ワンピースコーデ #PR
分かりにくい表現を使う
「タイアップ企画」「協力」など、広告であることが直感的に分かりにくい言葉を使うことも不適切と判断される可能性が高いです。
視認性が低い表示になっている
画像内に非常に小さな文字や、背景に溶け込むような薄い色で表示する視認性が低い表示も問題視されます。
動画でPR表記の表示時間が短すぎる
動画においてPR表記を表示する際に、視聴者が認識できないほど表示時間が短い場合も違反となる可能性があります。
PR表記をしながら「第三者の感想」を装う
PR表記をしているにも関わらず文中で「第三者の感想」という記載をするなど、広告であることが判断しにくい場合も、違反となる可能性があります。
ハッシュタグ表記だけに頼る
2022年10月に開催された「House of Instagram Japan」内では、「#PR」や「#タイアップ」といったハッシュタグ表記のみは非推奨と公表されています。
そのため、ハッシュタグ表記だけではなく、ブランドコンテンツとしてタイアップ投稿ラベルをつけるようにしましょう。
SNS別正しいPR表記の方法と設定手順

各SNSには、それぞれ専用の「広告表示機能」が用意されています。
ハッシュタグだけに頼らず、これらの公式機能を併用することが推奨されます。
Instagram:タイアップ投稿ラベル
Instagramでは「ブランドコンテンツ」を投稿する際に「タイアップ投稿ラベル」を使用することが義務付けられています。
ブランドコンテンツの対象となるのは、インフルエンサーなどが対価を受け取り、直接的・間接的にビジネスパートナーやその商品を取り上げたコンテンツです。
「対価」には、報酬のほか、無料で提供を受けた商品や貸し出しにより提供を受けた商品も該当するとされています。
| 設定手順(企業側) | 1.Instagramアカウントをプロアカウントに切り替えるプロフィール画面 → 設定とアクティビティ → アカウントの種類とツール → プロアカウントに切り替える2.設定画面から「ビジネス」→「ブランドコンテンツ」を選択する3.「コンテンツクリエイターを承認」からインフルエンサーを検索し、リクエストを承認する |
| 設定手順(インフルエンサー側) | 1.投稿作成画面で「詳細設定」をタップする2.「ブランドコンテンツ」→「タイアップ投稿ラベルを追加」をオンにする3.「ブランドパートナーを追加」から企業アカウントを検索・追加する4.投稿すると、プロフィール名の下に「〇〇とのタイアップ投稿」と表示される |
アカウントを作成したばかりでフォロワーがほとんどいない、または作成後しばらく放置していてアクティブな状態ではなかった場合、タイアップタグを使えないことがあります。
審査をリクエストするにはアカウントが30日間アクティブである必要があります。
X(旧Twitter):Paid Partnershipラベル
投稿の先頭に関係性と広告である旨の「PR 〇〇」を明記する必要があります。
折りたたんだ際に見えなくなったり、ツリーやリポストでの記載はNGとなります。
なお、2025年6月、X Adsにてハッシュタグ付きの投稿は配信が停止されることが発表されました。
そのため、今後のXにおけるPR表記は運用方法を見直す必要があります。
X上での第三者配信を活用する場合は、公式の「Paid Partnershipラベル」機能を使い、最新の仕様変更を都度確認することが重要です。
TikTok:商用コンテンツ公開設定(情報開示設定)
TikTokでブランド、製品、またはサービスを宣伝するコンテンツを投稿するには、コンテンツ情報開示設定をオンにする必要があります。
| 設定手順 | 1.投稿画面で「コンテンツの情報開示と広告」をタップする2.「商業コンテンツを開示する」項目をオンにする3.「広告使用承諾」や「広告としてのみ表示」などを必要に合わせてオンにする4.「保存」をタップして投稿する |
商用コンテンツ公開設定をオンにして投稿すると、画面下部付近に「有料パートナーシップ」や「プロモーションを含みます」といったラベルが自動表示されます。
このラベルは、動画を流し見しているユーザーにも宣伝が含まれている投稿だと直感的に伝える役割があります。
「広告だと開示するとおすすめに載りにくいのでは」という不安もよく聞かれますが、TikTokが公開している検証データでは、商用コンテンツとして適切に開示された動画と通常の動画で、パフォーマンスに大きな差は見られなかったとされています。
むしろ、広告であるにもかかわらず開示されていない投稿の方が、おすすめにふさわしくないコンテンツとして扱われる場合があります。
適切な開示は「マイナス」にはならないという認識を持ちましょう。
YouTube:有料プロモーションの開示設定
動画には、有料プロダクトプレースメント、有料おすすめ情報、スポンサーシップなど、視聴者への開示が必要なプロモーションコンテンツを配置できます。
これらのいずれかの情報を動画に含める場合は、動画の詳細で「有料プロモーション」のチェックボックスをオンにする必要があります。
| 設定手順 | 1.動画アップロード時、または編集画面で「詳細」タブを開く2.「タグ」セクション付近にある「有料プロモーションが含まれます」をチェックする3.視聴者にも「プロモーションが含まれています」という表示が動画開始時に自動で出る |
LINE・Threads・Facebook:明示的なテキスト表記が基本
LINE公式アカウントやThreads、Facebookには、Instagram・TikTokのような専用の「ブランドコンテンツラベル機能」が標準化されていません。
これらのプラットフォームでPR投稿を行う場合は、投稿文の冒頭に「【PR】」「広告」「〇〇社提供」を入れるなど、テキストで明確に表記することが基本的な対応となります。
違反した場合のペナルティと実際の措置事例

ステマ規制への違反は、決して軽いペナルティでは済みません。
ステマ規制違反が認められた場合、消費者庁長官は事業者に対し、措置命令(景品表示法第7条)を出します。
措置命令に従わない場合、事業者には「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」が、担当役員など個人には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科される可能性があります。
また、景品表示法には、違反行為によって得た不当な利益を没収する課徴金納付命令(景品表示法第8条)という制度があります。
実際の措置事例(2025年)
アフィリエイトサイトにおいて「50kg以上の女性9割がしていない 3週間で60.8kg→47.2kgまで瘦せた方法がすごい!」との記載と共に引き締まった腹部の画像を表示することで、あたかも誰でも容易に痩身効果が得られるかのように宣伝していたことが景表法違反と判断されました。
さらに、「30〜60代女性が選ぶダイエットサプリNO.1」などの調査結果が、客観的な調査に基づくものではなかったとして、優良誤認表示として1,086万円の課徴金納付命令が発出されました(2025年6月30日)。
違反全体の規模
2025年7月、消費者庁が公表した最新データによれば、直近1年間(2024年8月〜2025年7月)に課徴金納付を命じられた総額は約3億3,348万円に達しました。
中でも健康食品や化粧品業界では、誇大表示や不十分なPR表記によって企業名が大きく報道され、ブランド価値を大きく毀損する事例が相次いでいます。
令和6年度(2024年7月〜2025年6月)の措置命令件数は5件(消費者庁、2025年5月発表)です。
件数自体は多くないものの、社名公表とそれに伴うブランドダメージは非常に大きなものとなるでしょう。
PR表記・インフルエンサー施策チェックリスト

【表記の基本チェック】
□ 「PR」「広告」「プロモーション」など明確な表記を使用しているか
□ 「タイアップ企画」「協力」など曖昧な表現に頼っていないか
□ PR表記をハッシュタグの末尾に紛れ込ませていないか
□ 投稿の冒頭・目立つ位置に表記しているか
□ 文字サイズ・色は視認しやすいか(背景に溶け込んでいないか)
□ 「もっと見る」を押さないと見えない場所に表記していないか
【動画コンテンツのチェック】
□ PR表記の表示時間は視聴者が認識できる長さか
□ 動画内・キャプションの両方でPRであることを明示しているか
□ YouTubeの「有料プロモーション」設定をオンにしているか
□ TikTokの「商用コンテンツ公開設定」をオンにしているか
【SNS公式機能の活用チェック】
□ Instagram:タイアップ投稿ラベルを設定しているか
□ X:Paid Partnershipラベル等で関係性を明示しているか
□ TikTok:情報開示設定をオンにしているか
□ YouTube:有料プロモーションのチェックボックスをオンにしているか
【契約・依頼段階のチェック】
□ インフルエンサーへの依頼内容を書面で明確化しているか
□ PR表記の方法・位置・文言を契約時に指示しているか
□ 投稿前に企業側で内容を確認する体制があるか
□ 商品の無償提供(ギフティング)の場合もPR表記対象と認識しているか
□ 投稿キャンペーンの応募条件に特定の好意的内容を強制していないか
【社内体制のチェック】
□ PR表記漏れが発覚した場合の対応フローが決まっているか
□ 広報・法務・マーケティングの連携体制があるか
□ 過去の投稿について定期的に表記の見直しを行っているか
PR表記に向けて企業が整えるべき社内体制

PR表記の問題は「担当者の知識不足」だけでは説明がつかないことが多く、組織的な対応体制の整備が不可欠です。
契約段階での明確化
ステマ規制を遵守するためには、インフルエンサーとの間で取り交わす契約内容が極めて重要です。
口約束ではなく、書面でルールを明確に定めましょう。
契約書には「PR表記の方法」「表記位置」「使用する公式機能(タイアップ投稿ラベル等)」を具体的に明記することが望ましいです。
投稿前の確認体制
インフルエンサーや一般ユーザーにキャンペーンの拡散を依頼する場合、「広告であることが伝わる見せ方」になっているかチェックしましょう。
特に注意したいのが、投稿者本人に任せきりにするケースです。
広告であると明示しない投稿は、ステマ規制への違反と見なされるリスクがあります。
依頼段階で広告表記のルールをしっかり伝え、投稿前に企業が内容を確認する体制を整えましょう。
法務・マーケティングの連携
「ユーザーには響くけど法的にNG」「法的には問題ないけど伝わりづらい」といったズレが生まれないよう、法務と連携をとりましょう。
クリエイティブを重視するマーケティング部門と、リスクを管理する法務部門が早い段階から連携することで、表現力とコンプライアンスを両立できます。
まとめ

SNSにおけるPR表記は、単なる「お作法」ではなく、景品表示法という国の法律に基づいた義務です。
2025年からはステルスマーケティング規制が本格適用され、広報・広告担当者は会社のブランドと資産を守る経営リスク管理の最前線にたされることになりました。
違反時には措置命令・課徴金納付命令という重いペナルティがあり、健康食品・化粧品業界では1,000万円超の課徴金事例も発生しています。
「誠実に対応する企業」であることを示すPR表記は、もはやリスク回避のための作業ではなく、企業の信頼性を積み上げる行為そのものだという認識を、組織全体で共有することが重要です。
本記事のチェックリストを活用し、自社のインフルエンサー施策・SNS運用を見直してみてください。
「PR表記のルールが複雑でよくわからない」
「インフルエンサー施策を法令遵守の形で実施したい」
「SNS運用全体を安全に任せたい」
そんな企業様のご相談を、BEASTARでは随時受け付けています。
BEASTARは大阪を拠点とするSNS運用代行・SNSマーケティング会社です。
InstagramやX、TikTokを中心に各SNSの運用代行・コンサルティングを行っており、最新機能をいち早く取り入れた戦略設計から投稿制作・分析・改善まで、ワンストップでサポートします。
まずはお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。