Instagramのリール動画は、企業アカウントのリーチ拡大と新規フォロワー獲得において、最も重要な機能のひとつです。
しかし、「どんなリールが伸びるのか」「フォロワーに嫌われないか」といった不安から、新しいコンテンツへの挑戦をためらう運用担当者様も少なくありません。

そんな課題を解決する画期的な機能として注目を集めているのが、「トライアルリール」です。
フォロワー以外のユーザーを対象に、実験的にコンテンツを試せる場として活用されています。

本記事では、トライアルリールの具体的な使い方や解除方法、企業アカウントが活用するメリットなどをプロの視点から徹底的に解説します。

リールのトライアル機能とは

画像引用:Instagram for Creators

トライアルリールはInstagramが提供する動画投稿の形式のひとつで、投稿時に「トライアル」モードをONにすることで利用できます。
通常のリールとは異なり、既存のフォロワーのフィードやリールタブ、プロフィールのメイングリッドやリールタブには表示されません。
フォロワー以外の新規ユーザーの発見タブやリールタブに限定して、リール動画を先行公開できます。

2024年12月頃から段階的にリリースされており、現時点ではフォロワーが1,000人以上のプロアカウント(ビジネスまたはクリエイター)でのみ利用できる機能です。

新しいコンテンツのテーマ、動画の構成、キャプション、サムネイルなど、さまざまな要素の反応を事前にテストする目的で、リリース以降多くのアカウントで利用されています。
リーチ数、再生数、エンゲージメント率(いいね、コメント、保存)、プロフィールへの遷移率、フォロワー転換率などのデータに基づいてコンテンツの「当たり外れ」を判断し、より効果的なリール運用戦略を練りたいアカウントにおすすめです。

関連記事:【徹底比較】Instagramのフィード投稿とリール投稿の違いとは?企業アカウントが使い分けるべきポイント

企業アカウントが「トライアルリール」を使うメリット

企業がSNS運用を行う際、「新しい切り口に挑戦したいが怖さがある」「反応が取れないから同じ型に戻ってしまっている」という声をよく耳にします。
トライアルリールには、そうした運用の“足かせ”を解消するメリットが複数あります。

フォロワーの期待に縛られず新フォーマットを試せる

既存フォロワーはブランドやサービスをすでに理解していたり、期待される投稿スタイルが固定化されていることがあります。
したがって、新たな切り口や表現を投入すると反応が鈍い、またはフォロー解除を誘発する可能性も。

しかし、トライアルリールであれば、こうした影響を受けずに新企画をリスク低く試すことができます。
フォロワーに表示されないため、既存のフォロワーコミュニティを保護しながら、大胆なコンテンツテストを行うことが可能です。

フォロワー以外の未知の層からリアルな反応が得られる

フォロワーはすでにアカウントとの関係値があるため、コンテンツの質が低くてもリーチやエンゲージメントが伸びるケースもあります。

一方でトライアルリールでは、初見ユーザーに先行配信されるため、より「新規層に刺さるかどうか」「ショート動画コンテンツとして良質か」を測る指標として有効です。
テスト結果から、新規ユーザーの興味を引く動画の構成やテーマ、プロフィールへの誘導効果が高いキャプションなどを特定し、「伸びるリール」を量産するための成功パターンを確立できます。

コンテンツ制作のPDCAサイクルを回せる

テスト結果が数値として明確に出るため、コンテンツの良し悪しを客観的に判断できます。
例えば、AパターンとBパターンのリールをテストし、Bパターンのリールがプロフィール遷移率で2倍の成果を出した場合、Bパターンの要素を分析し、次のコンテンツ制作にすぐに反映できます。

動画作成にかかるリソース(企画・撮影・編集)は企業にとって負荷が高いものですが、トライアルリールによって無駄なコンテンツ制作を削減し、運用効率を大幅に向上させることが可能です。

また、トライアルリールで高いパフォーマンスを示した動画は、Instagram広告のクリエイティブとしても高い効果を発揮する可能性が高いです。
広告出稿前にトライアルリールでテストを行うことで、費用対効果の高いクリエイティブを厳選でき、広告費の最適化にも繋がります。

関連記事:SNS広告とは?仕組み・種類・メリット・活用方法をプロが徹底解説

トライアルリールの具体的な使い方・設定方法

実際にトライアルリールを活用するには、通常のリール投稿とは異なる設定手順を理解しておく必要があります。
ここでは、企業アカウントでも迷わず使えるよう、トライアルリールの利用手順をステップ形式で解説します。

※トライアルリールは2025年10月現在、プロアカウントのみで利用できる機能です。プロアカウントへの切り替え手順は下記記事内で解説しています。

関連記事:Instagramのインサイトとは?見方・活用方法・改善のポイントを徹底解説

ステップ1. リール投稿画面で「トライアル」を選択

通常どおりプロフィール画面右上の「+」をタップし、「リール」を選択して音源等の設定を行い画面遷移すると、最終確認画面(キャプション入力・タグ設定画面)の下部に、「トライアル(Trial)」というスイッチが表示されます。

これをONにすると、投稿はフォロワーには非表示のまま、Instagram側のアルゴリズムにより非フォロワーに向けてテスト配信されます。
※新規ユーザーが既存フォロワーにDM等でリール動画をシェアした場合は、そのフォロワーが閲覧する可能性があります。

ステップ2. 投稿後にデータを観察する

画像引用:Instagram for Creators

トライアルリールをシェアしてから約24時間後、リールビューアーで閲覧数やいいね数、コメント数、シェア数などの主要なエンゲージメント指標を確認できます。
また、過去にシェアしたトライアル動画と比較したパフォーマンスなどのインサイトも取得できます。

この段階では、主に以下の指標を確認してみましょう。

指標内容改善判断に使えるヒント
リーチ数新規ユーザーに届いた数サムネイルや冒頭で興味を惹けているか
再生完了率最後まで見られた割合テキスト量やテンポは適切か
保存・シェア有益性・共感度「誰かに伝えたい」レベルの内容か
コメント感情的な反応思わず反応してしまうフック的要素が含まれているか

ステップ3. フォロワーにも公開するか判断

投稿後に反応が良好だった場合、「フォロワーにも公開」ボタンをタップして正式なリールとして本番公開が可能です。
公開後は通常のリール同様にプロフィールやリールタブに表示され、広告出稿やピン留めなども行えます。

なお、最初の72時間以内に再生数が多かったトライアルリール動画を自動的に全員にシェアするように、投稿時に設定しておくことも可能です。
ステップ1の画面で「トライアル設定」をタップし、「全員に自動的にシェア」をONにすると適用されます。

ステップ3で重要なのは、テスト結果を踏まえた調整を入れてから本公開すること。

具体的には以下のような修正が考えられます。

  • 冒頭のカットを短縮/テロップを追加
  • CTA(例:リンク誘導・キャプション誘導)を明確化
  • キャプション内のコピーを最適化 など

このように、試す→分析→公開の工程を標準化することで、企業アカウントはデータドリブンな動画運用を確立できます。

成果を出すためのトライアルリール活用戦略

トライアルリールを単なる「お試し投稿」で終わらせてしまっていませんか?
むしろ、動画PDCAを最短で回すための学習装置として設計するのが、企業アカウントの正解です。

まず、トライアルリールでテストすべき主な要素は以下の通りです。

テスト要素具体的なテスト内容の例期待される効果
動画の冒頭冒頭2〜3秒間のフック(掴み)のパターン違い。テロップの有無や配置。視聴維持率の向上
動画のテーマ異なるターゲット層に向けたテーマや、新しい商品ジャンルの紹介。新規ユーザーの興味関心の把握
キャプションプロフィールへの誘導文言(CTA)のパターン違い。プロフィール遷移率の向上
カバー画像視認性の高いデザイン、文字の大きさ、色使いのパターン違い。検索や発見タブ、プロフィールにおけるタップ率の向上
BGM・音声トレンドの音源かオリジナル音源か。効果音の有無。自動音声かアフレコか。リーチや再生完了率の向上

上記を踏まえ、おすすめの活用アイデアをご紹介します。

活用法1. 仮説を素早く検証する

既存リールが伸び悩んでいる場合、原因を推測するよりもトライアルリールで仮説検証を行うほうが早いです。

例えば、

仮説①ナレーション入りとテロップのみ、視聴完了率が高いのはどちらか?
仮説②タップされやすいカバー画像は、1枚絵or分割構図のどちらか?
仮説③冒頭フックを「数字で始める」「質問で始める」どちらが伸びるか?

など、このように複数パターンをトライアルリールで試し、数値の高かった要素を勝ちパターンとして言語化し、今後のコンテンツ制作のガイドラインとして蓄積することが可能です。
結果として「勘ではなくデータで判断できるSNS運用」が実現します。

活用法2. 競合との差別化やオリジナル表現を模索する

トライアルリールでは、フォロワーに影響を与えず「これまでと異なる表現」を試せます。

例えば、

・ドキュメンタリー風のストーリー構成
・アニメーションやイラストでの表現
・社員の日常や撮影裏側の発信

など、普段の投稿では躊躇していた新たな企画を試すことができます。

トライアルリールはフォロワー以外の新規ユーザーの反応を見るため、潜在的なターゲット層が何を求めているかという貴重なインサイトを得られます。
例えば、特定のテーマのリールが予想外に伸びた場合、それはまだ顕在化していない市場のニーズを示している可能性があります。
このインサイトを、商品開発やマーケティング戦略全体に活かすことも可能です。

活用法3. 広告・キャンペーン素材を先行テストする

企業では広告用動画を制作する前に、トライアルリールで自然反応を確認しておくのが有効です。
広告素材をいきなり出稿するよりも、ユーザーの自然な反応を得た上で尺や内容を最適化できるため、CPC(クリック単価)やCVR(コンバージョン率)の改善にもつながります。

例えば、

・新商品ローンチ前のティザー映像をトライアル配信
・社員登場型動画と商品中心動画、どちらが反応が良いか検証
・音楽付き vs ナレーション付きなど、トーン&マナーの比較

これにより「広告にすべき素材」と「オーガニック投稿にすべき素材」を明確に分けられます。

トライアルリールの注意点と失敗を防ぐポイント

トライアルリールは便利な反面、使い方を誤ると「データが正しく取れない」「リスク検証が機能しない」などの問題が起こりがちです。
最後に、よくある落とし穴を整理しておきましょう。

検証条件を毎回変えすぎない

1本ずつ全く異なるテーマ・構成で投稿してしまうと、どの要素が成果に影響したか判断できません。
検証テーマは1回につき1要素(例:BGM/冒頭フレーズ/テキスト量など)に絞るのが基本です。

分析期間を短くしすぎない

配信直後はアルゴリズムのテスト表示による急激な再生数変動が起きやすいです。
最低でも48〜72時間の観察期間を設け、安定したインサイト数値をもとに判断しましょう。

成果を内部共有&テンプレート化する

トライアルリールは「一過性のテスト」で終わらせず、社内ナレッジとして残すことが重要です。

・実施日、テーマ、仮説、結果、改善案をスプレッドシートに記録
・月次MTGで共有し、リール全体の改善指針に反映

これを繰り返すと、企業内にPDCA文化が根付くようになり、リール以外のフィードや他のSNS運用でも役立ちます。

まとめ|トライアルリールで「動画運用の再現性」を高めよう

リスクを抑えて新しい動画に挑戦できるトライアルリールは、データに基づいてSNSを伸ばしていくための強力な武器になります。
特にフォロワーの期待に応えることを優先している企業アカウントでは、マンネリ化・反応低下という課題を抱えているケースが多く、そうした状況を打破する突破口として有効です。

トライアルリールを活かすことで得られる最大の成果は、運用の再現性。
どんなテーマ・構成・トーンが刺さるかを数値で把握し、勝ちパターンを積み上げることにより、「勘と経験」ではなく「仕組みと分析」に基づいたSNS発信へとシフトできます。

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